社会保険 月額変更のルール

2020/08/05 ブログ

社会保険 月額変更のルール

 

社会保険料は、原則として4月から6月に支払われた3か月の給料の平均をもとに、その年の保険料が決定される仕組みとなっています。これを定時決定といいます。

 

しかし、年の途中で昇給(降給)等により固定的賃金が変わり、それに伴い給与額が大幅に変わったときは、定時決定を待たずに保険料を改定します。これを随時改定といいます。通称月額変更です。

 

今回は、この月額変更のルールについて確認してみたいと思います。

 


 

この記事でお伝えすること

 

 

・月額変更のルール

・月額変更のチェックポイント

・問い合わせの多い事例

 

 


 

 

月額変更のルール

 

 

月額変更に該当する3つの条件があります。

 

①昇給(降給)などにより固定的賃金が変更される

 

②賃金変更後の3か月間の給与総額の平均が、これまでの標準報酬月額と比べ「2等級以上」変わっている。

 

③賃金変更後の3ヶ月とも、1カ月17日以上出勤している。(または17日以上の賃金がでている。)

 

この3つの条件を満たした場合のみ、月額変更に該当します。

 

 

社会保険では、給与を「固定的賃金」と「非固定的賃金」に区別しています。

このうち「固定的賃金」に変更があった場合を月額変更の第一条件としています。

 

・固定的賃金…基本給、役職手当、家族手当、住宅手当、通勤手当など毎月定額なもの

 

・非固定的賃金…残業手当 また欠勤がない場合に支給されるような皆勤手当や、個人の業績に連動して支給されるような営業手当、業績手当など毎月変動するもの

 

 

 


 

月額変更のチェックポイント

 

それでは、次に月額変更に該当するかどうかのチェック方法について確認していきましょう。

 

チェックポイントは3つ

 

 

<STEP1>固定的賃金に変動がないかチッェク

 

基本給などの固定的賃金に1円でも変動があれば、月額変更の対象となります。

ここでのポイントは固定的賃金だけをチェックすることです。

 

非固定的賃金が大幅に変わっても、固定的賃金が変わらなければ月額変更の対象にはなりません。

 

 

<STEP2>変更後3か月間の給与総額を3で割り、1カ月当たりの平均額をだします。

 

ここでのポイントは給与総額で計算するということです。

 

STEP1では固定的賃金のみのチェックですが、平均額を出すときは固定的賃金と非固定的賃金を合わせた給与総額から計算します。

 

固定的賃金の昇給額では、2等級以上の差が出ないとしても、残業手当などの非固定的賃金が多ければ、月額変更の対象になる可能性があります。

 

 

<STEP3>標準報酬月額表に当てはめ、以前の標準報酬月額と比べる

 

STEP2で算出した金額を標準報酬月額表に当てはめ新しい標準報酬月額を確認します。

 

以前の標準報酬月額と新しい標準報酬月額を比べて、2等級以上差が生じれば、月額変更に該当します。

 

ただし、

固定的賃金は上がったが、3か月の平均をとった結果、残業が少ない理由などにより2等級下がるパターンもあります。

これは月額変更には該当しません。

 

 

昇給等で給与が上がる ⇒ 2等級以上上がる

(給与が上がって、等級も上がるので「上げ上げ」)

 

降給等で給与が下がる ⇒ 2等級以上下がる

(給与が下がって、等級も下がるので「下げ下げ」)

 

「上げ上げ」か「下げ下げ」

このどちらかのパターンのみ月額変更となります。

 

 

事例で確認してみましょう。

 


 

(事例1)

現標準報酬月額200

4月に基本給20万円から21万円に昇給

 

4月支給給与 基本給21万円

5月支給給与 基本給21万円+残業代3万円

6月支給給与 基本給21万円+残業代5万円

支給された場合

 

3つのSTEPで確認してみましょう。

 

<STEP1>

固定的賃金変動を確認。基本給が上がった。

 

<STEP2>

3か月総額を3で割る。

71万円÷3=23.6万円

 

<STEP3>

標準報酬月額表に当てはめ比較

23.6万円=新標準報酬月額240

新標準報酬月額240 現標準報酬月額200

2等級の差が生じ「上げ上げ」

 

このケースだと月額変更に該当します。

7月分の社会保険料より変更です。

 


 

(事例2)

現標準報酬月額300

4月に役職手当2万円が外された。

 

4月支給給与 基本給28万円+残業代3万円

5月支給給与 基本給28万円+残業代7万円

6月支給給与 基本給28万円+残業代5万円

 

こちらも3つのSTEPで確認してみましょう。

 

<STEP1>

固定的賃金変動を確認。役職手当が外され給与が下がった。

 

<STEP2>

3か月総額を3で割る。

99万円÷3=33万

 

<STEP3>

標準報酬月額表に当てはめ比較

33万=新標準報酬月額340

新標準報酬月額340 現標準報酬月額300

2等級の差が生じた。

 

しかし役職手当が外れて給与が下がったが、残業代が多かったため、標準報酬月額は2等級上がった。

 

月額変更のルールである

「上げ上げ」か「下げ下げ」に該当しないので、

このケースは2等級以上差が生じても月額変更には該当しません。

 


 

 

問い合わせの多い事例

 

 

それでは、原則が確認できたところで、問い合わせの多い、イレギュラーな事例を確認していきましょう。

 

 

 

<ケース1>

Q、給与計算が15日締め当月25日払いで、月給制の従業員の給与計算期間の途中で昇給があった場合の月額変更届の取り扱いはどうなりますか

 

<具体例>

給与計算期間の途中である7/1に昇給した。

7/25に支払った給与は昇給前の給与の半額(6/16から6/30分)と昇給後の給与の半額(7/1~7/15分)を足して支給した。

7月、8月、9月の3か月の平均を取ると、標準報酬月額は1等級しか変わらない。

しかし8月、9月、10月の平均を取ると、標準報酬月額は2等級の変動があり月額変更に該当する。昇給月は7月になり月額変更に該当しないのか?それとも昇給月は8月になり月額変更に該当するのか?

 

A、昇給月(起算月)は8月となり、月額変更に該当する。

 

月額変更は

①昇給・降給などで固定的賃金(基本給や手当)に変動があること

②変動月から3か月の間に支払われた報酬の平均額に該当する標準報酬月額と従前の標準報酬月額に2等級以上の差が生じていること

③3か月とも支払基礎日数が17日以上あること

以上3つのすべてを満たしていることが条件です。

7月支払の給与については、昇給後の給与は、半分(15日分)しか支払基礎日数がありません。つまり、③を満たさない

すべて満たすことができるのは、8月支払の給与からとなるため、昇給月は8月となり、このケースでは月額変更に該当します。

8月から10月の平均をとり、11月の保険料より変更となります。

 

 

似たようなケースで、

給与計算期間の途中で転居し、通勤手当を日割にして支払うケースがあると思います。

 

例えば、転居前の通勤手当が5,000円

転居後の通勤手当が30,000円

 

7月1日に転居したため、

転居前と転居後の定期代の半額を合算して支給しました。

7月25日支給の通勤手当 2,500円+15,000円=17,500円

8月25日支給の通勤手当 30,000円

 

この場合も、通常の1か月分の定期代が支給された8月が起算月となります。

 

 

 

<ケース2>

Q、時給者で、基本給の変更はないが、1日の所定労働時間が変更された場合は月額変更に該当するのか?

 

<具体例>

4月に所定労働時間を変更する契約内容の変更があった。

時給 1,200円 → 1,200円 (変更なし)

所定労働時間 1日8時間 → 1日6時間

所定労働日数 1月21日 → 21日(変更なし)

従前の標準報酬月額200

 

4月総支給額 16万円 

5月総支給額 17万円

6月総支給額 16.5円

新標準報酬月額170

 

 

A、月額変更に該当する。

時給額に変更がないので、一見月額変更に該当しないように思えますが、

契約時間が変更となったときは、固定的賃金の変動に該当します。

この場合は、契約時間変更後、3か月平均をみると2等級以上の差が生じたので、月額変更に該当となります。

 

 

 

<ケース3>

Q、非固定的賃金であっても、新たに創設されたり廃止されたりした場合は、賃金体系の変更にあたるため月額変更の対象となるが、

例えば非固定的賃金が創設されたが、非固定的賃金支給の条件に該当せず支払われなかった場合はどのような取扱いになるのか?

 

<具体例>

4月支給の給与より、欠勤がなかった場合に3万円支給される皆勤手当が創設された。

現在の給与15万円 標準報酬月額150

・4月給与 15万円 (欠勤ありのため皆勤手当支給なし)

・5月給与 15万円+皆勤手当3万円=18万円

・6月給与 15万円+皆勤手当3万円=18万円

新標準報酬月額170 2等級以上変動となった。

この場合、月額変更の起算月はいつになるのか?

 

A、起算月は4月となる。

皆勤手当が新設されたのは4月なので、賃金体系の変更となる月は4月となります。

皆勤手当の支払の有無に関わらず、この場合は4月が起算月となり、以後3か月間のいずれかで皆勤手当が支払われていれば、月額変更の対象となります。

今回のケースでいえば、5月、6月に皆勤手当の支給があったので、月額変更の対象となりました。

しかし、4月、5月、6月とも条件を満たさずに皆勤手当が支払われなかった場合は、起算月は4月とならず月額変更に該当しません。

7月以降に皆勤手当が支払われた月を起算月とすることもありません。

 

 

 

<ケース4>

Q、昇給分をまとめて支給された場合の、月額変更の取扱いはどうなるのか?

 

<具体例>4月支給の給与より昇給する予定だったが、査定が遅れ6月支給の給与で、4月、5月分の昇給分も含めて支給された。

 

標準報酬月額200

4月支給給与 20万円

5月支給給与 20万円

6月支給給与 24万円+8万円(4月、5月昇給分)=32万円

7月支給給与 24万円

8月支給給与 24万円

 

この場合は、起算月は4月となるのか?それとも昇給分が反映された6月となるのか?

 

 

A、起算月は6月となる。

この場合は、実際に支給された月が起算月となります。つまり、6月が起算月となり、その後3か月の平均をとって2等級以上の差があれば月額変更に該当します。

注意しなければならないのが、3か月の給与額の平均を取る際に、4月、5月昇給分は除くことです。

今回のケースで言えば、

6月に支給された8万円は除いて算出します。

24万円×3カ月÷3=24万円

新標準報酬月額240

2等級以上の差が生じたため、9月月変となります。

 

 


 

いかがでしたでしょうか?

今回は問い合わせの多い月額変更のルールについて確認してみました。

チェックポイントを押さえて、月額変更手続きの漏れがないようご注意ください。