なぜ就業規則を作成するのか
就業規則とは
1人でも従業員を雇っている会社では、その従業員が働く上で守らなければならないルールや賃金、労働時間、休日、休暇等の労働条件について決めておかなければなりません。
この「決まりごと」をまとめたものが就業規則です。簡単に言えば会社のルールブックですね。
「決めておかなければならない」と言いましたが、
法律上、就業規則の作成義務は、常時10人以上の労働者を使用する使用者ということになっております。
なぜ就業規則を作成するのか
しかし、会社のルールは10人になってから作るものでしょうか?
私は「1人でも従業員を雇ったら、就業規則を作成する」ことをおススメしています。
従業員を雇ったら就業規則を作成する理由
理由は2つあります。
●小さなうちから組織としてうまく機能させるため
●労使トラブルを防ぐため
小さなうちから組織としてうまく機能させるため
従業員が2名、3名となれば、小さくてもひとつの組織です。
組織として最大限の効果を上げていくには、ルールが必要です。
例えばバスケットのチームは5名でも組織として動くために、チーム内のルールがありますよね。
それぞれが好き勝手に動いてしまえば、少ない人数で動いているとしても、チームとして勝つことができません。
同じように5名未満の小さな組織でも、一人一人が勝手に動いてしまえば、組織としてうまく機能しません。
また「1人でも従業員を雇ったら、就業規則を作成する」理由として、
特に初期に雇用された従業員に多いのですが、「従業員が1、2名のときは自由に働けることができたのに、人数が増えてきたらルールに縛られるようになり、働きにくくなった」と不満を持たれることも少なくありません。
この原因は、最初からルールを明確にしていなかったことが原因のひとつです。
例えば、
労働時間や休日、休暇など、少ない人数であれば融通を利かせることもできたと思いますが、人数が増えてきたら皆の要望を受け入れることが難しくなります。
そこからルールを作ろうとすると、今までは「許されていた」ことが許されなくなります。
最初からルールを明確にしておけば、このような不満を持たれることもなかったでしょう。
つまり就業規則は、法律で決められているから作るのではなく、組織としてうまく機能させて、最大限に効果を上げるためにルールを明確化するために作成するのです。
労使トラブルを防ぐため
次に「会社を労使トラブルから防ぐため」についてですが、
ルールが明確でないと、多くのトラブルが生じます。
ルール不明瞭による労使トラブルの代表例をいくつか挙げてみます。
<残業代トラブル>
退職する従業員から3年分の残業代を請求された。
従業員の言い分:残業をしても、残業代が支払われたことは一度もなかった。
会社の言い分:残業代は基本給に含んでいた。従業員も採用時に同意していた。
・基本給に残業代が含まれているのであれば、就業規則に定める必要あり。
<解雇トラブル>
無断遅刻が続いた従業員を辞めさせた。
従業員の言い分:遅刻をしただけで解雇することは、不当解雇だ。
会社の言い分:時間を守ることは社会人としての最低限のルール。そのルールを守れない者はクビになるのは当然である。
・就業規則の解雇事由に該当しなければ、解雇することはできない。
<無給休暇トラブル>
入社間もない従業員の家族が亡くなり、年次有給休暇も発生していないため特別の休暇(無給)を与えた。
従業員の言い分:欠勤控除されていることに納得いかない。以前勤めていた会社の特別休暇は有給扱いだったので有給として処理してほしい。
会社の言い分:休暇は与えるが有給とは言っていない。
・有給の休暇、無給の休暇を就業規則で明確にしておく必要あり。
<休職トラブル>
従業員が骨折で全治3か月の重傷。しばらく休んでいたが、2か月を経過した日に退職扱いとされた。
従業員の言い分:3か月間休むことができると思っていた。
会社の言い分:代わりの従業員を採用したタイミングで、復帰できなかったので一旦退職してもらった。
・休職制度の有無、期間を就業規則で明確にしておく必要あり。
このように、賃金や退職に関連することでトラブルになることが多いです。
なぜトラブルが起こるかと言えば、
「会社と従業員の認識の違い」です。
認識の違いが生まれないように、就業規則でルールを明確にしておくのです。
労使トラブルは、起きてからの対処ではなく、起きる前の準備が大切です。
そのために、当事務所では1人でも従業員を採用したら、就業規則を作成することをおススメしています。