あらためて確認!時間外労働上限規制について

2020/10/26 ブログ

近年、厚生労働省では、過労死対策の取組を行ってきておりますが、週の労働時間が60時間以上の労働者の割合は低下傾向にあるものの引き続き高く、依然として恒常的な長時間労働の実態があります。

また過労死等による労災認定件数も引き続き高水準で推移しています。

 

このような背景から2020年11月より「過労死等防止啓発月間」の一環として「過重労働解消キャンペーン」が実施されるとのことで、

この期間中に重点的な監督指導も行う予定のようです。

 

そこで今回は、

中小企業でも2020年4月1日よりスタートしている「時間外労働の上限規制」について、改めて確認しておきたいと思います。

 


 

 

この記事でお伝えすること

 

・労働時間の原則

・時間外・休日労働のルール

・時間外労働の上限規制の内容

・実務での注意点

 

 


 

 

労働時間の原則

 

 

<原則>

1週40時間 1日8時間を超える労働の禁止

 

労基法32条では、

「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について40時間を超えて労働させてはならない。

使用者は一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について8時間を超えて労働させてはならない」

と定められております。

 

 

使用者とは会社と置き換えてもらって良いです。

つまり会社は従業員に対して、週40時間、1日8時間を超えて労働させてはならないと禁止されているのです。

 

この週40時間、1日8時間は、法律で決められている労働時間なので、法定労働時間といいます。

 

 

例外として

従業員が常時10人未満の商業・映画、演劇業・保健衛生業・接客、娯楽業は週44時間まで労働してもらうことが可能です。

 

また変形労働時間制を利用することにより、1日8時間、週40時間を超えて働いてもらうことが可能です。

 


 

 

時間外労働・休日労働のルール

 

 

とはいえ例外にも該当しなくても、

多くの会社が「1日8時間以上」、「週40時間以上」働くことができています。

 

それはなぜでしょう?

 

実は2つの要件を満たすことで、法定労働時間を超えて働くことが可能となります。

 

 

1.36協定の届出

2.就業規則に規定

 

 

 

36協定は、法定労働時間を超えて働くことがある時間(いわゆる残業時間)や休日労働の回数を労使で話し合い、協定を締結し、労働基準監督署に届け出るものです。

 

法定労働時間を超えて働くことは禁止されているので、超えて働いた場合は罰則があります。

しかし、36協定を届出ることで免罰効果があります。

 

もうひとつは就業規則に法定労働時間を超えて働いてもらう規定を設ける必要があります。

この規定を入れることで業務命令として残業を命じることが可能となります。

 

 

もともと残業や休日労働は禁止されているので、このような手続きが必要となります。

 

 

36協定に記入さえすれば、何時間でも残業できるのかというと、

もちろんそのようなことはなく

今回の法改正前までは、「時間外労働の限度に関する基準」というものがありました。

 

 

<時間外労働の限度に関する基準>

 

一定期間

限度時間

一定期間

限度時間

1週間

15時間(14時間)

2か月

81時間(75時間)

2週間

27時間(25時間)

3か月

120時間(110時間)

4週間

43時間(40時間)

1年間

360時間(320時間)

1か月

45時間(42時間)

()内は、1年単位の変形労働時間制で働く労働者についての限度時間(3か月を超える者に限る)

 

 

このように一定期間において限度時間の基準がありました。

 

この基準も、特別条項付の協定を結べば、

年に6回までは限度時間を超えて働いてもらうことができていたため、実質上限がないようなものでした。

 


 

 

時間外労働の上限規制の内容

 

 

このように基準があっても、実質上限がない状態だったため長時間労働の抑制には効果がありませんでした。

 

そこで、今回の法改正によりこの基準が法律に格上げされて、下記内容に上限が設けられるようになりました。

 

さらに法律に格上げされたので、違反した場合には罰則があります。

 

 

1.延長時間は、月45時間、年360時間(年変形の場合は月42時間、年320時間)

今まで基準で設定されていた3ヶ月120時間など、1ヶ月・1年以外の限度時間は廃止。

 

2.特別条項を締結する場合においても、1年720時間(月平均60時間)を限度とする。

 

3.2.の1年720時間以内において、一時的に事務量が増加する場合について、最低限、上回ることのできない上限を設ける。

単月では100時間未満、2~6ヶ月平均では80時間以内
  

※3.のみ法定休日労働の時間数も含みます。

 

 

例えば、

4月に90時間、5月70時間の時間外労働があった場合、

それぞれ単月でみた場合は、100時間を超えていません。

4月と5月の平均は、(90時間+70時間)÷2か月=80時間

平均80時間以内となります。

 

 

ではこの場合、理論上、6月は何時間まで時間外労働できるでしょうか?

 

答えは80時間まで可能です。

単月で100時間を超えていません。

5月、6月の平均は(70時間+80時間)÷2か月=75時間

4月、5月、6月の平均は(90時間+70時間+80時間)÷3か月=80時間

いずれも平均80時間以内となるので、法違反とはなりません。

 


 

 

特別条項発動時に健康確保措置の実施が求められる

 

特別条項を発動し、限度時間を超えて労働させる場合には、

以下のいずれかの健康確保措置の実施が求められます。

 

監督署調査でも実施状況の確認が行われると思います。

 

・労働時間が一定時間を超えた労働者に医師による面接指導を実施すること

・1ヶ月における深夜労働の回数を一定回数以内とすること

・勤務間インターバルを設定すること

・勤務状況及び健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与すること

・勤務状況及び健康状態に応じて、健康診断を実施すること

・年次有給休暇取得の連続取得を含めてその取得を促進すること

・心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること

・勤務状況及び健康状態に配慮し、必要に応じて適切な部署に配置転換をすること

・必要に応じて産業医等による助言・指導を受け、又は
労働者に産業医等による保健指導を受けさせること。

・その他

 

実際の新36協定届を見ると、該当する番号と具体的内容を記載するようになっています。

 

 

 

 

特別条項による延長時間

 

指針では「当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合をできる限り具体的に定めなければならず、

「業務の都合上必要な場合」、「業務上やむを得ない場合」など恒常的な長時間労働を招くおそれがあるものを定めることは認められないことに留意しなければならないこととする」と定められています。

 

つまり単に業務が繁忙だからという理由ではNGで、より具体的に記載する必要があります。

 

 

特別条項発動の手続き

 

45時間を超えて労働時間を延長する場合には、労働者代表との協議または労働者代表への通知が要件とされています。

労働基準監督署の監督指導において、きちんと特別条項発動の手続きが取られているかの確認もあります。

「労働者代表への通知」とし、確実に実施し書面として残しておきましょう。

 


 

 

実務での注意点

 

 

最低でも年に6ヶ月は残業を45時間以内に収めないと違法となります。

 

月80時間といった残業はないものの、慢性的に45時間を超えているような状態は解消する必要があります。

 

36協定の管理は原則的に「所定時間外労働時間+法定外休日労働時間」を把握し、協定時間を超えないようにする必要がありますが、

①単月100時間未満 ②2~6ヶ月平均で80時間以内

については「法定休日労働時間」も含めて管理する必要があります。

 

締日で確認したら、「労働時間の上限が超えていた!」ということのないよう、

労働時間把握を徹底した上で、社員の残業状況を確認できる仕組みづくりが必要です。

 

残業の申請承認制など、労働時間の基本的な仕組みの構築と徹底が重要になります。