同一労働同一賃金 個別における対応ポイント

2021/01/28 ブログ

2020年4月1日より大企業と派遣事業でスタートした同一労働同一賃金ですが、

いよいよ中小企業でも2021年4月1日よりスタートします。

 

前々回では、「概要の解説」

前回では、「具体的に何をすれば良いのか」

について解説しました。

詳しくはこちらもご確認ください。

 

 

 

 

 

具体的に何をすれば良いかということで、

 

1.雇用形態区分の整理しましょう

2.同一労働同一賃金の対象となる待遇を洗い出しましょう

3.雇用形態による待遇差の確認をしましょう

4.待遇差の根拠を確認した上で、待遇差の妥当性について検討しましょう

5.待遇差が妥当ではない場合の対応策を検討しましょう。また不合理な待遇差がある場合は是正しましょう

6.見直しをしたら就業規則の改定、説明文書の作成しましょう

 

この1~6の順で進めていきましょうと書きましたが、

 

4の「待遇差が妥当であるかの判断」が非常に難しいかと思います。

 

今回は、「待遇差が妥当であるか」を判断するために、「個別における対応ポイント」について解説したいと思います。

 


 

この記事でお伝えすること

 

・基本給のポイント

・賞与のポイント

・退職金のポイント

・役職手当のポイント

・特殊作業手当・特殊勤務手当のポイント

・精皆勤手当のポイント

・通勤手当・出張旅費のポイント

・家族手当のポイント

・住宅手当のポイント

・慶弔休暇のポイント

・休職のポイント

 


 

 

それでは、「待遇差が妥当であるか」を判断するために、基本給や各種手当、各種制度についてのポイントと対応方法について確認していきたいと思います。

 

 


 

基本給のポイント

 

ガイドラインでは次のように記載されております。

 

基本給が、

「労働者の能力や経験に応じて支払うもの」

「業績や成果に応じて支払うもの」

「勤続年数に応じて支払うもの」

など、それぞれの趣旨・性格に照らして、

実態に違いがなければ同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければならない。

 

つまり

労働者の

①能力または経験

②業績または成果

③勤続年数に応じて支給するものについては、

それぞれ、①、②、③に応じた部分に関して正社員と短非正規労働者について同一であれば同一の支給。

一定の相違がある場合はその相違に応じて支給することになります。

 

<関連する裁判例>大阪医科薬科大学事件・大阪高判H31.2.15

不合理ではない

 

アルバイト職員は短時間勤務者が6割を占めており、

短時間勤務者に適した時給制を採用していることは不合理とはいえない。

 

正職員とアルバイト職員とでは、

・職務、責任、異動の可能性、採用に際し求められる能力に大きな違いがある。

・正職員の賃金は勤続年数に伴う職務遂行能力の向上に応じた職能給的な性格。

・アルバイト職員の賃金は特定の簡易な作業に対応した職務給的な性格。

 

これらを踏まえると、2割程度の賃金水準の相違は不合理であるとは認められない。

 

基本給については「職務の内容」や「人材活用の仕組み」の違いがポイントとなりますが、これまでの裁判例においては、基本給について「不合理な相違」と判断されたものは少ない状況です。

 

<対応>

正社員と非正規労働者との各業務の専門性や難易度、業績等への影響度等の性質を比較し、共通のものさしを使って基本給の違いに妥当なものであるか検証すると良いかと思います。

 

 

例えば、次のような観点から仕事の性質を測ると良いでしょう。

 

①採用や異動によって変わりの人材を探すのが難しい仕事

②今までとは異なる新しい方法が求められる仕事

③特殊なスキルや技能が必要な仕事

④従業員の裁量に任せる仕事

⑤部門内、部門外、社外との調整が多い仕事

⑥問題解決につなげる仕事

⑦業績に大きく影響する仕事

 

例えば正社員、非正規労働者について、これらの要素ごとに点数化します。

その点数の合計点で業務の性質を評価します。

そのうえで、時間単価が業務の性質との間でバランスが取れているか確認するとわかりやすいかと思います。

 

 


 

賞与のポイント

 

 

ガイドラインでは次のように記載されております。

 

会社の業績等への貢献に応じて支給するものについて

 

・同一の貢献には同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければならない。

・目標達成への責任が正社員と非正規労働者で異なっているなど「職務の内容」の違いに応じた賞与の差は認められる。

 

このように、正社員と非正規労働者との間で異なる支給基準を設けている場合でも直ちに不合理であるとはされにくい傾向です。

 

しかし貢献度合いが両者で同等であったり、正社員には「職務の内容」や会社業績等に関係なく一定額を支給しているような場合は、正社員との賞与の違いが問題となるでしょう。

 

 

<対応>

例えば次のような対応が考えられます。

 

(例1)

「職務の内容」、「人材活用の仕組み」等の違いに応じて、非正規労働者に対して正社員とは異なる掛率、支給月数、金額水準で支給する。

   

(例2)

非正規労働者は簡易な定型業務が多く、貢献度合いを一律で図ることができる場合には、定額の一時金を支給する(5万円、10万円等)

   

(例3)

契約更新の際に、貢献分を時給の上昇分に反映させる。

貢献分は具体的にいくらなのか、通常の昇給分とどのような違いがあるのか等、その反映方法・根拠を明らかにしておくことが求められます。

 

 


 

退職金のポイント

 

 

退職金は一般的には、長期雇用を前提とした制度なので、短期の雇用を前提とした非正規労働者に支給しない場合でも不合理とはされにくいです。

 

ただし、無期契約の非正規労働者については、長期雇用が見込まれるとみなされるため、相応の対応が必要と考えられます。

 

<関連する裁判例>メトロコマース事件・最三小判R2.10.13

不合理ではない

 

・職務遂行能力や責任の程度等を踏まえた労務の対価の後払い

・継続的な勤務等に対する功労報償などの複合的な性質

・正社員としての職務を遂行できる人材の確保・定着を図る目的

 

これらを重視し、正社員と契約社員との間で職務内容等に違いがあることを認め、

退職金を支給しないことを不合理とまではいえないとの判断が示されました。

 

 

<対応>

1 年、2 年等、期間限定で雇用するパートタイマー等であれば、長期雇用を前提とした退職金を支給しないとしても不合理とはされにくいと考えられます。

 

とはいえ、すべての非正規労働者に退職金制度を設けなくて良いとは言えず、

無期契約や継続的な勤務、職務内容のバランスを見て

例えば、正社員とは別に「勤続5年以上で5万円、10年以上で10万円」など勤続年数に応じた一定の退職金を支給することも考えられます。

 

 


 

役職手当のポイント

 

 

ガイドラインでは次のように記載されております。

 

・役職の内容に応じて支給される役職手当で、正社員と同一の内容の役職就く非正規労働者には同一の役職手当を支給。

・相違がある場合は相違に応じた役職手当を支給。

 

 

<対応>

非正規労働者を役職に就かせていなければ対応の必要は特になく、就かせている場合は、同一または違いに応じて支給するということです。

 

違いに応じて支給する場合の「違いの判断要素」として

 

・担当部署の予算規模

・業務内容と責任の範囲

・目標達成責任

・部下の人数

 

などでどれだけの違いがあるのかで判断すると良いでしょう。

 

 


 

特殊作業手当・特殊勤務手当のポイント

 

 

●特殊作業手当

手当ての対象となる業務に非正規労働者が、正社員と同様に従事する場合には、同様の支給が求められます。

 

<対応>

危険度の高い業務や特殊な技術や経験が求められる業務に応じて支給されるような特殊作業手当は、基本的に「職務の内容」が重視されます。

職務の内容が同一であれば、特殊作業手当で差を付ける運用は見直したほうが良いでしょう。

 

 

●特殊勤務手当

非正規労働者が正社員と同様の勤務形態のもとで、特殊勤務手当の対象となる勤務時間や勤務日に勤務しているのであれば、同一の支給が求められる。

ただし、勤務形態や給与体系の違いによって、支給の有無が合理的に説明できる場合は、差を設けることは許容されます。

 

<対応>

不規則な勤務や一般的な就労時間とは異なる時間帯での勤務が求められるような場合に支給される特殊勤務手当は、特殊作業手当同様、職務内容が重視されます。

特殊勤務手当の趣旨が正社員と同様に該当するのであれば、非正規労働者にも同一の支給をしましょう。

支給に差をつけるのであれば、

例えばあらかじめ決められた時間帯で不規則とならないような勤務形態とすることも方法のひとつです。

 


 

精皆勤手当のポイント

 

 

・職務内容が正社員と非正規労働者で同じ場合には、同様に支給することが求められる。

 

・職務内容に違いがあり、皆勤を求める必要性も異なることが明確な場合には、正社員にのみ支給または支給額に差をつけることも許容されます。

 

 

<対応>

精皆勤手当の支給の有無や金額に差をつける場合には以下の点も考慮したうえで決めましょう。

 

・遅刻、欠勤等について、昇給額や賞与のマイナス評価となるか

 

・非正規労働者について、精皆勤手当の代わりに、皆勤を奨励する意味合いの代償措置を実施しているかどうか(昇給の増額等)

 

 


 

通勤手当、出張旅費のポイント

 

 

非正規労働者にも、通常の労働者と同一の通勤手当及び出張旅費を支給しなければならない。

 

 

<対応>

①正社員と同じ所定労働日数の場合

通勤手当の支払方法や上限額等で差をつけずに、同一の支給基準で揃えましょう。

 

②正社員よりも少ない日数で勤務している場合

所定労働日数が少なかったり、出勤日数が変動するような非正規労働者の場合は、出勤日数に応じた形で通勤手当を支給することが認められます。

 

 


 

家族手当のポイント

 

 

家族手当は一般的には「長期継続勤務の期待」と「継続勤務の確保」を目的として支給するものです。

 

扶養家族がおり、かつ、勤続期間が長期にわたる者が多いような場合には非正規労働者に対しても支給することが考えられます。

 

 

<対応>

対応としては、継続的な勤務が見込まれるかどうかがポイントとなります。

継続的な勤務が見込まれる非正規労働者には同様に支給するか

または家族手当の支給意義を改めて考え、基本給に統合する等、給与制度全体を通して見直しを図る選択肢もあります。

 

 


 

住宅手当のポイント

 

 

正社員にのみ転居を伴う人事異動がある場合には支給の相違が認められることがあるが、非正規労働者にも転居を伴う人事異動があり、住宅手当の趣旨・目的が該当するような場合は支給することが求められます。

 

 

<対応>

・正社員のみ転居を伴う人事異動がある場合は正社員のみ住宅手当を支給。

 

・非正規労働者も転居を伴う人事異動がある場合は、非正規にも住宅手当を支給。

 

・転居を伴う人事異動がない場合は理由が不明瞭になりがちなので、非正規労働者も含めた支給とするか、基本給に統合する等、給与制度全体を通して見直しを図る選択肢もあります。

 

 


 

慶弔休暇のポイント

 

 

原則として、非正規労働者に対しても同一の慶弔休暇を付与する必要があります。

勤務日数の少ない非正規労働者は、勤務日の振替での対応を求めることも可能です。

 

 

<対応>

正社員との日数に差を付けることは可能です。

労働日数に応じて比例した形で日数を調整し付与するなどの方法が考えられます。

 

ただし、正社員は有給、非正規労働者は無給と差を付けることはNGです。

正社員と同様有給とするのが妥当です。

 

 


 

休職のポイント

 

無期契約の非正規労働者については、正社員と同様に継続的な勤務が見込まれることから、基本的には病気休職を付与することが適当です。

 

有期契約の非正規労働者については、契約更新により、長期継続勤務が見込まれるかどうかもポイントです。

 

さらに有期契約であっても一定の病気休職の設定を行うことが望ましいかと思われます。

 

 


 

今回は特に多くの企業に該当する基本給や各種手当、制度に絞ってポイントをお伝えしました。

 

まずはガイドラインや考え方を確認しましょう。

そして

待遇差が妥当でないようであれば、対応法を参考に少しでも是正できるよう進めてみてください。