2022年10月 社会保険適用拡大

2021/04/12 コラム

2022年10月より社会保険加入対象となる方の条件が拡大されます。

 

具体的には、

社会保険の被保険者が100人を超える事業所が対象となります。

 

また2024年10月からは

社会保険の被保険者が50人を超える事業所も対象となります。

 

今回は、この社会保険適用拡大について確認してみたいと思います。

 


 

この記事でお伝えすること

 

・社会保険加入条件

・短時間労働者の社会保険加入条件

・2022年10月からの条件

・適用拡大で増える社会保険料

・対象となる事業所がおこなっておくこと

 


 

社会保険加入条件

 

 

社会保険は、週の所定労働時間および1か月の所定労働日数が常時雇用者(正社員)の4分の3以上であれば、

パートタイマー、アルバイトでも加入対象となります。

 

これをいわゆる4分の3要件と言います。

 

例えば、

正社員の週の所定労働時間が40時間の事業所の場合、

40時間×3/4=30時間

となりますので、

週の労働時間が30時間以上のパートタイマー、アルバイトも社会保険の加入対象者となります。

 

これが社会保険加入条件の原則となります。

 


 

短時間労働者の社会保険加入条件

 

 

原則は、4分の3要件を満たした方となりますが、

実はこの4分の3要件に該当しない短時間労働者でも社会保険の加入対象となる方がいます。

 

 

次の5つの要件を満たす方です。

 

1.週の所定労働時間が20時間以上あること

2.雇用期間が1年以上見込まれること

3.賃金の月額が88,000円以上であること

4.学生でないこと

5.特定適用事業所または任意特定適用事業所に勤めていること

 

特定適用事業所とは、社会保険の被保険者の総数が常時500人を超える事業所です。

任意特定適用事業所とは、500人を超える事業所に該当しなくても、労使の合意に基づき、短時間労働者を社会保険の適用対象とする申出をした事業所です。

 

つまり短時間労働者の社会保険加入が義務付けられているのは、

被保険者500人超えの大企業ということになります。

 


 

2022年10月からの条件

 

 

このルールは、2016年10月より開始されたものですが、

2022年10月より、5要件のうち2点が変更となります。

 

1点目は

「雇用期間が1年以上見込まれること」とされていた要件が、

「雇用期間が2か月以上見込まれること」に変更されます。

 

 

2点目は

特定適用事業所の定義が変更となります。

「社会保険の被保険者の総数が常時500人を超える事業所」から

「社会保険の被保険者の総数が常時100人を超える事業所」に変更されます。

 

さらには、2024年10月より

「社会保険の被保険者の総数が常時50人を超える事業所」に変更されます。

 

つまり、今までは500人を超える大企業が対象となっていた短時間労働者の社会保険加入義務が、

100人、50人といった中小企業も対象となりその範囲が拡大されます。

 

 

ここまでの内容を表にまとめると、下記のようになります。

 

対象

要件

2016年10月~

2022年10月~

2024年10月~

事業所

事業所の規模

常時500人超

常時100人超

常時50人超

短時間

労働者

労働

時間

週の労働時間が20時間以上

変更なし

変更なし

賃金

給与

月額88,000円以上

変更なし

変更なし

勤務

期間

雇用期間が1年以上見込まれる

雇用期間が2か月

以上見込まれる

雇用期間が2か月

以上見込まれる

適用

除外

学生ではないこと

変更なし

変更なし

 

 


 

適用拡大で増える社会保険料

 

 

今まで正社員の4分3未満で働いていたパートタイマーやアルバイトでも適用拡大により社会保険加入の対象となります。

 

そうなると当然会社が負担する社会保険料が増えることになりますので、

あらかじめどれくらいの保険料になるのか試算しておくことをおススメします。

 

例えば、1日5時間、週5日勤務する35歳のパートタイマー。

この場合、

週の労働時間が25時間なので、いままでのルールであれば社会保険の対象外ではありましたが、

2022年10月より社会保険の加入対象となります。

 

仮に時給額が1,050円だとした場合、保険料はどれくらいになるのか計算してみましょう。

 

<神奈川県の事業所>

週の労働時間:25時間

1月あたりの賃金額:1,050円×25時間×4.3週=112,875円

標準報酬月額は110千円となります。

 

健康保険料 5,495円

厚生年金保険料:10,065円

合計15,560円(本人と会社それぞれ同額を負担します。)

したがって、会社は毎月15,560円負担増となります。

※2021年4月現在

 

同じような方が10名いれば、

15,560円×10名=155,600円となります。

 


 

対象となる事業所がおこなっておくこと

 

 

まずは新たに被保険者となる短時間労働者を把握しておきましょう。

 

1.週の所定労働時間が20時間以上あること

2.雇用期間が2か月以上見込まれること

3.賃金の月額が88,000円以上であること

4.学生でないこと

 

この4つの条件を満たす短時間労働者を確認するために、労働条件通知書を確認する必要があります。

 

次に対象となる従業員への説明を実施しましょう。

 

対象となる従業員のなかには、配偶者の扶養の範囲内で働いていた従業員も少なくないかと思います。

2022年(2024年)10月以降は、上記の労働条件によって社会保険の加入対象になることを説明しておく必要があります。

 

従業員によっては、配偶者の扶養のままの働き方を希望する方もいらっしゃるかもしれません。

その場合は、

労働時間の変更など労働条件の見直しも必要でしょう。

ただし社会保険に加入するメリットもあります。きちんと制度の内容を説明したうえで従業員の方に判断してもらうことが重要です。

 

主な社会保険加入のメリットを載せておきます。

 

<年金>

年金が2階建てになり一生涯受け取れます。

 

・老齢年金が上乗せ

受給資格期間を満たした方で65歳以上の方が受け取ることができる年金です。

 

・障害年金が上乗せ 

病気やケガなどで障害状態と認定された場合に支給される年金です。2階建てに加えて保障の範囲も広がります。

 

・遺族年金が上乗せ

被保険者が亡くなったときに、残された遺族に対して支給される年金です。

 

 

<医療>

国民健康保険にはない給付金制度あります。

 

・傷病手当金

病休期間中、給与の2/3相当が支給されます。

 

・出産手当金 

産休期間中、給与の2/3相当が支給されます。

 

 

<保険料>

国民年金、国民健康保険料は全額本人負担ですが、

社会保険(健康保険、厚生年金保険)の保険料は会社が半分負担します。

 

なお、保険料は給与から天引きになるので、本人が納付する必要はありません。

 

 

このようなメリットを説明した上で、

社会保険に加入した際の給与シミュレーションをしてあげると良いでしょう。

 

 

社会保険に加入すると手取り額が減るから加入を拒否する方もいらっしゃいます。

しかし条件に合致した場合は、本人が拒否しても強制加入となります。

 

そうなると、

「労働条件を変更」したり、「正社員に転換」するといった対応も出てくるかと思います。

 

社会保険適用拡大がもとで優秀なパートタイマーが離職したり、トラブルになることがないよう、

対象となりそうな方には、なるべく早めに説明しておくことをおススメします。