何をすれば良い?パワハラ防止措置義務

2021/10/06 コラム

2020年6月1日より職場におけるハラスメント防止措置対策が強化されました。

これにより、パワーハラスメント防止措置が事業主の義務となりました。

 

こちらは現状、大企業のみ義務化とされていますが、

2022年年4月1日より、いよいよ中業企業にも義務付けられます。

 

 

最近、「パワハラ防止措置義務とは具体的になにをすれば良いの?」といった問い合わせが増えているので、今回はその具体的な内容について確認したいと思います。

 

 

概要については、こちらの記事でも書いていますのでご確認ください。

 

 


 

改正された労働施策総合推進法において、職場におけるパワハラについて事業主に防止措置を講じることを義務付けています。

職場におけるパワハラを防止するために講ずべき措置とは、具体的に指針において10の措置事項が義務付けられています。

 

この10の措置事項において、具体的になにをすべきか?ひとつひとつ解説していきます。

 

下記①から⑩が措置事項です。

 


 

Ⅰ 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

 

10の措置事項①

パワハラの内容、パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること

 

<具体的に何をする?>

・就業規則やハラスメント防止規程などに「職場におけるパワハラの内容、行ってはならない旨の方針」を盛り込む。

 

・社内報やパンフレットを作成し、配布、掲示する。

 

・全労働者を対象としたパワハラ防止研修を実施し、その中でトップメッセージを発信する。

 

などが考えられます。

 

トップメッセージについて

何を伝えれば良いかわからないという方は、

下記内容を参考にしてみてください。

 

ハラスメントについて

 

ハラスメント行為は人権にかかわる問題であり、従業員の尊厳を傷つけ職場環境の悪化を招く、ゆゆしき問題です。

 

当社は、ハラスメント行為は断じて許さず、すべての従業員が互いに尊重し合える、安全で快適な職場環境づくりに取り組んでいきます。

 

このため、管理職を始めとする全従業員は、研修などにより、ハラスメントに関する知識や対応能力を向上させ、そのような行為を発生させない、許さない企業風土づくりを心掛けてください。

 

○○年○月○日

○○株式会社 代表取締役社長 □□□□

 


 

10の措置事項

パワハラの⾏為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。

 

<具体的に何をする?>

・就業規則の服務規律等に、ハラスメントの言動を⾏った者に対する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知しましょう。

 

 

「対処の内容」を文書に規定し明確化することで、

未然にパワハラを防止することにもつながりますし、

「どのようなパワハラの言動」が「どのような処分になるのか」について判断要素を明確にすることにもなります。

 


 

Ⅱ 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

 

10の措置事項③

相談窓⼝をあらかじめ定め、労働者に周知すること。

 

<具体的に何をする?>

・相談に対応する担当者を決めましょう。

相談窓口や担当者について社内、社外は問いません。

 

社内で相談窓口を設けることが難しいようであれば、

専門の外部機関や社会保険労務士等に依頼しましょう。

 

相談窓口と担当者を決定したら、労働者に文書等で周知します。

相談は面談だけでなく、電話、メール等でも受けられる体制を整えておくと良いです。

 


 

 

10の措置事項

相談窓⼝担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。

 

パワハラが現実に生じている場合だけでなく、

発生のおそれがある場合や、パワハラに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応する体制が求められます。

 

また被害を受けた労働者が萎縮して相談を躊躇する例もあります。

そのようなことも踏まえ、相談者の心身の状況やパワハラ言動が⾏われた際の受け止めなどその認識にも配慮する必要があるでしょう。

 

<具体的に何をする?>

・相談窓⼝の担当者が相談を受けた場合、その内容や状況に応じて、相談窓⼝の担当者と人事担当者、各部署の上長とが連携を図ることができる体制としておくこと

 

・相談窓⼝の担当者が相談を受けた場合の対応マニュアルを作成したり、相談担当者のための研修を実施すると良いでしょう。

 

 

適切に対応することは、担当者の負担も大きいです。

以下ポイントをお伝えしておきます。

 

相談に当たっては、相談者の話に真摯に耳を傾け、相談者の意向などを的確に把握することが必要です。

特に、ハラスメントを受けた心理的影響からうまく話すことができない場合がありますので、担当者は忍耐強く聞くことも必要です。

相談を受ける場所や時間帯等も、相談者が安心して相談できる状況となるよう工夫すると良いでしょう。

 

「内容や状況に応じ適切に対応する」には、

労働者が受けているハラスメントの性格・態様によって、状況を注意深く⾒守る程度のものから、上司、同僚などを通じ、⾏為者に対し間接的に注意を促すもの、直接注意を促すものなど事案に即した対応を⾏う必要があります。

また、対応に当たっては、公正な⽴場に⽴って、真摯に対応しなければなりません。相談担当者が相談を受けて終わりなのではなく、

 

・会社としてどのように判断したのか、

・今後組織としてどのように対応していくのか

 

等を相談者本⼈にフィードバックすることも大切です。

 

相談者が相談窓⼝の担当者の言動などによってさらに被害を受けることもあり得ます。

そのようなことが起こらないよう、相談担当者に対する研修は確実に行っておきたいものです。

 

もし社内で体制を整えることが難しいようであれば、外部機関に委託するのも一つの方法です。

 


 

Ⅲ 職場におけるパワーハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応

 

10の措置事項

事実関係を迅速かつ正確に確認すること

 

パワハラが生じてから、誰がどのように対応するのか検討するのでは対応が遅れます。

 

事実確認は、被害の継続、拡大を防ぐため、相談があったらスピーディーに対応することが重要です。

 

 

<具体的に何をする?>

・スピーディーに対応するために、相談窓⼝と個別事案に対応する担当部署との連携や対応の⼿順などをあらかじめ明確に定めておきましょう。

 

例えば、A部署でハラスメントが起きたときには、A部署のB部長に確認する。

万が一B部長が当事者の場合は、C課長に確認する。

 

というように、誰に事実確認やヒアリングを取るのかあらかじめ決めておきましょう。

 


 

10の措置事項

事実関係の確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に⾏うこと

 

<具体的に何をする?>

パワハラの内容や状況に応じ、

 

・被害者と⾏為者の間の関係改善に向けての援助

・被害者と⾏為者を引き離すための配置転換

・⾏為者の謝罪

・被害者の労働条件上の不利益の回復

・管理監督者等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応

 

等の措置を講ずることが考えられます。

 


 

10の措置事項⑦

事実関係の確認ができた場合には、⾏為者に対する措置を適正に⾏うこと

 

 

<具体的に何をする?>

・就業規則のパワハラの言動を⾏った者に対して定めた懲戒規定に基づき、⾏為者に対して必要な懲戒を行います。

併せてその内容や状況に応じ、被害者と⾏為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と⾏為者を引き離すための配置転換、⾏為者の謝罪等の措置が考えられます。

 

ハラスメントの事実が確認されても、

問題を軽く考えたり、

話が広がるのを避けるため内密に処理しようとしたり、

個⼈間の問題として当事者の解決に委ねようとする事例がみられます。

しかし、こうした対応は問題をさらにこじらせることになります。

 

適正に解決するためには、相談の段階から、

事業主が真摯に取り組むこと

⾏為者への制裁は、公正なルールに基づいて⾏うことが重要です。

 

⾏為者に対して懲戒規定に沿った処分を⾏うだけでなく、

⾏為者の言動がなぜパワハラに該当し、どのような問題があるのかをきちんと理解させることが大切です。

 


 

10の措置事項

再発防止に向けた措置を講ずること

 

<具体的に何をする?>

あらためてトップメッセージの発信、研修の実施等、①の内容を実施します。

 

一度の周知では、なかなか浸透しません。

繰り返しトップメッセージを発信することと定期的に研修を実施することが重要です。

 


 

Ⅳ 併せて講ずべき措置

 

10の措置事項

相談者・⾏為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者に周知すること

 

 

<具体的に何をする?>

・相談窓⼝においては相談者・⾏為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じていることを、就業規則やハラスメント防止規程、社内報やパンフレットに掲載し、配付しましょう。

 

・相談者・⾏為者等のプライバシー保護のために必要な事項をあらかじめマニュアルに定め、相談窓⼝の担当者が相談を受けた際には、そのマニュアルに基づき対応していきます。

 

(規定例)

相談及び苦情への対応に当たっては、関係者のプライバシーは保護されるとと もに、相談をしたこと、又は事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利 益な取扱いは行わない。

 


 

10の措置事項

事業主に相談したこと、事実関係の確認に協⼒したこと、都道府県労働局の援助制度を利⽤したこと等を理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

 

 

<具体的に何をする?>

・就業規則に、労働者がハラスメントの相談等を理由として、その労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を規定し、労働者に周知しましょう。

 

(規定例)

会社は、従業員が、ハラスメントに関し相談をしたこと、又は事実関係の確認に協力したこと等を理由として、職場においては人事異動、人事評価等の人事管理上の処遇において、相談者及び情報提供者等に不利益な取扱いをすることはない。

 

 


 

今回は、パワハラ防止措置義務の10の措置事項において、具体的になにをすべきか?について確認してみました。

 

中小企業は2022年4月から義務化となります。

研修やマニュアル作成、規定の変更等、担当者の教育など、やることはたくさんあります。

スケジュールを立てながら、今から準備を進めていきましょう。

 

 

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