【法改正】傷病手当金の支給期間通算化
2022年1月1日、法改正により傷病手当金の支給期間の取扱いが変更となります。
今回はこの変更された支給期間の取扱いについて確認してみたいと思います。
傷病手当金の支給期間通算化
傷病手当金の支給期間について
これまでは、支給を始めた日から起算して1年6ヶ月を超えない期間支給するとされていましたが、
支給を始めた日から通算して1年6ヶ月間支給するものとすることに変更されます。
例えば、がん治療で手術をし、その期間入院でお休みをしたあと、抗がん剤治療や放射線治療として働きながら、定期的に通院治療が行われるケースがあります。
通院治療をしている間は、出勤できるのでその期間は傷病手当金が支給されません。
しかし、傷病手当金が支給されない期間も含めて、1年6ヶ月間までしか支給されないので、
下図のように、1年6ヶ月経過後、再度治療のために入院することになっても傷病手当金は支給されませんでした。
病気を治療しながら仕事をしている方は、労働人口の3人に1人と多数を占めます。
病気を理由に仕事を辞めざるを得ない方々や、仕事を続けていても職場の理解が乏しいなど治療と仕事の両立が困難な状況に直面している方々も多いという理由から
傷病手当金の支給要件の見直しを図り、下図のように通算化に変更されることになりました。
すでに傷病手当金を受けている方はどうなる?
通算化は2022年1月1日からスタートしますが、
ここで疑問に思う方もいるでしょう。
改正前より傷病手当金を受けている方はどうなるのか?
つまり通算化が適用されるのか否か?
これについては、経過措置が設けられております。
法令では、
「第一条の規定による改正後の健康保険法第九十九条第四項の規定は、施行日の前日において、支給を始めた日から起算して一年六月を経過していない傷病手当金について適用し、施行日前に第一条の規定による改正前の健康保険法第九十九条第四項に規定する支給期間が満了した傷病手当金については、なお従前の例による。」
と規定されております。
ちょっとわかりにくいですね。
つまり、
2021年12月31日において、暦の通算で1年6ヶ月経過していない場合は、
通算化が適用されます。
2022年1月1日より前に歴の通算で1年6ヶ月経過している場合は、通算化は適用されないことになります。
もっとわかりやすく説明すると
通算化が適用される方は、
2020年7月2日以降、傷病手当金の受給を開始した人となります。
(2020年7月2日開始であれば、2021年12月31日において1年6ヶ月経過していないため)
実務上、非常に影響してくるところでありますので、
改正内容をしっかりと理解しておきましょう。
傷病手当金の基本的な内容をおさらい
最後に
傷病手当金の基本的な内容を確認しておきましょう。
<傷病手当金とは?>
傷病手当金は、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、病気やけがのために会社を休み、会社から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。
<どんなとき受けられる?>
傷病手当金は、被保険者が病気やけがのために働くことができず、会社を休んだ日が連続して3日間あったうえで、4日目以降、休んだ日に対して支給されます。
ただし、休んだ期間について会社から傷病手当金の額より多い給与の支給を受けた場合には、傷病手当金は支給されません。
<支給額は?>
1日当たりの金額:
直近12か月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する金額。
例えば直近12か月の標準報酬月額が
①280 ②280 ③280 ④280 ⑤300 ⑥300 ⑦300 ⑧300 ⑨300 ⑩300 ⑪300 ⑫300
とした場合、
①直近12か月の標準報酬月額を平均した額
(280千円×4か月+300千円×8か月)÷12か月=293,333円
②平均した標準報酬月額から日額を算出
293,333円÷30=9,780円(10円未満四捨五入)
③日額の2/3が支給日額
10,000円×2/3=6,520円(1円未満四捨五入)
となり、
1日休業あたり、6,520円が支給されます。
なお、被保険者期間が12か月に満たない者については、
①その被保険者の被保険者期間における標準報酬月額の平均額
②その被保険者の属する保険者の全被保険者の標準報酬月額の平均額
のいずれか低い額を算定の基礎とします。
終わりに
今回の改正は被保険者にとって、有利になる内容です。
従業員の方より経過措置の内容についてはご質問があると思います。
内容を理解した上で説明できるようにしておきましょう。