【改正育児介護休業法】施行までにやるべきこと

2022/01/25 コラム

2022年4月、10月と段階的に育児介護休業法の改正があります。

法改正の概要については、以前「2022年の改正育児介護休業法とは」で説明させていただきました。

 

 

 

 

改正時期が近づき、具体的な内容が明らかになってきましたので、

今回は、「施行までにやるべきこと」にフォーカスしてお伝えしたいと思います。

 


 

改正の概要

 

2022年4月

・妊娠・出産の申出をした従業員に対する個別の周知と意向確認

・育児休業を取得しやすい雇用環境の整備

・有期雇用従業員の育児・介護休業取得要件緩和

 

2022年10月

出生時育児休業(産後パパ育休)の創設

育児休業の分割取得 2回まで分割取得が可能に。

 

2023年4月

・育児休業取得状況の公表義務化

 

※今回の記事では赤字の改正内容について「やるべきこと」をお伝えします。

 

それでは、順番にやるべきことを確認していきましょう。

 


 

個別周知・意向確認

 

まずは、「妊娠・出産の申出をした従業員に対する個別の周知と意向確認」です。

 

「個別周知」とは

従業員や従業員の配偶者が妊娠・出産したことを申し出たときに

 

・育児休業・産後パパ育休に関する制度

 

・育児休業・産後パパ育休の申出先

 

・育児休業給付に関すること

 

・労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い

 

などを説明してくださいと言われています。

 

「意向確認」とは

育児休業を取得するか否か、本人の意向を書面などを使って確認することです。

 

この個別周知と意向確認の方法は

 

・面談

・書面交付 

・FAX 

・電子メール等

 

のいずれかとされており、

面談については、オンラインでも可能とのことです。

FAX、メールについては従業員が希望した場合のみとされているので、

実質的には面談、書面交付が多くなるでしょう。

 


 

★施行までにやるべきこと

 

 

それでは、個別周知・意向確認でやるべきことを整理しておきましょう。

 

◎ 個別周知と意向確認の方法を決める。(面談?書面交付?)

 

◎ 面談を実施する場合は、部署・担当者を決める

 

◎ 担当者には、個別周知の内容を説明できるよう教育しておく

 

◎ 書面交付する場合は、制度についてわかりやすい資料を作成する

 

◎ 意向確認のできる書面を作成する(図1 参照)

 

 

(図1)

 


 

雇用環境の整備

 

次に「育児休業を取得しやすい雇用環境の整備」です。

 

雇用環境の整備とは何をすれば良いのでしょう。

具体的には下記のうち少なくとも一つを実施する必要があります。

 

・育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施

 

・育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口設置)

 

・自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供

 

・自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

 

 

それぞれ、もう少し詳しく説明します。

 

「研修」を選択する場合は、

少なくとも管理職については研修を受けたことがある状態にしておくこと

 

「相談窓口の設置」を選択する場合は、

形式的に窓口を設置すれば良いというわけではなく、実質的な対応が可能な窓口でなければならないこと

 

「自社の育休取得事例の収集・提供」を選択する場合は、

事例の掲載された書類の配付等で従業員が閲覧できる状態としておくこと

 

「制度と育休取得促進に関する方針の周知」を選択する場合は、

自社の従業員へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針を記載したものを、事業所内へ掲示したり配布すること

 

など一定の基準があります。

 

ちなみに「事例の収集・提供」や「育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知」については、どのような書面を作れば良いのかわかりにくいと思います。

厚労省より参考例の書式が出ておりますので、

こちらの内容を参考に作成してみると良いでしょう(図2 図3)

 

(図2)

 

(図3)

 


 

★施行までにやるべきこと

 

 

それでは、「雇用環境の整備」でやるべきことを整理しておきましょう。

 

◎ 雇用環境整備のうち、条件を確認した上で、自社でどれを選択するか決定する

 

選択した雇用環境整備に応じて

◎ 研修資料の作成、研修の実施

 

◎ 相談窓口の設置と担当者の決定・担当者への教育

 

◎ 周知資料の作成

 

などを行う。

 


 

出生時育児休業

 

次に「出生時育児休業」です。通称、産後パパ育休とも言います。

 

出生時育児休業とは

通常の育児休業と異なり、

子の出生後8週間、いわゆる産後休業にあたる期間に

 

「最大4週間まで取得できる」

 

「休業は2回まで分割できる」

 

「休業の申出期限は2週間前まででOK」

 

「労使協定を締結することで、一定の範囲内で働くこともできる」

 

といった育児休業です。

通常の育児休業に比べて、かなり柔軟な育児休業と考えてもらえば良いでしょう。

 

ちなみに出生時育児休業の休業期間は最大4週間までなので、

これを超えた期間の休業をしたい場合は、通常の育児休業と同じ扱いとなります。

 

 

<申出期限を延ばすこともできる>

 

休業の申出期限は2週間前までとされていますが、

雇用環境整備をしたうえで、

労使協定を締結すれば、申出期限を最大1ヶ月前まで延ばすこともできます。

 

ただし、

申出期限を最大1ヶ月前までにするには①から③すべてを満たす必要があります。

結論から言うと、法を上回る措置が必要です。

 

①次のうち、2つ以上実施すること

 

・雇用する労働者に対する育児休業に係る研修の実施

・育児休業に関する相談体制の整備

・雇用する労働者の育児休業の取得に関する事例の収集及び当該事例の提供

・雇用する労働者に対する育児休業に関する制度及び育児休業の取得の促進に関する方針の周知

・育児休業申出をした労働者の育児休業の取得が円滑に行われるようにするための

 業務の配分又は人員の配置に係る必要な措置

 

4つ目までは、雇用環境整備の内容と同じですね。

つまり法令では、最低一つ実施すればOKとされている雇用環境整備について法を上回る2つ以上の実施が求められます。

 

 

②育児休業の取得に関する定量的な目標を設定し、育児休業の取得の促進に関する方針を周知すること

 

定量的な目標とは数値目標です。

法に基づく育児休業の取得率のほか、

少なくとも男性の取得状況に関する目標を設定することが必要です。

 

 

③育児休業申出に係る当該労働者の意向を確認するための措置を講じた上で、その意向を把握するための取組を行うこと

 

法令で求められている意向確認は働きかけまで行えば良いとされています。

つまり返事がない場合は、それ以上確認を取らなくても、法令上はOKとなります。

しかし、ここでいう「意向を把握するための取組」とは

最初の意向確認のための措置の後に、

返事がないような場合は、リマインドを少なくとも1回は行うことが必要です。

 

申出期限を最大1ヶ月前までにしたい場合は、

これら3つの措置と労使協定の締結が必要です。

 

 

<休業中も就業可能>

また、出生時育児休業制度のもう一つの特徴。

休業中の就業が認められる点です。

 

ただし休業中に就業できるのは、労使協定を締結している場合に限られます。

もし就業を認めたい場合は、労使協定を締結しましょう。

 

労使協定を締結したからといって休業中に際限なく働くことができるわけではありません。

きちんと上限が設けられています。

 

・休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分

・休業開始・終了予定日を就業日とする場合はその日の所定労働時間数未満

・所定労働時間内での就業

 

例えば、

所定労働時間が9時から18時までの1日8時間

週の所定労働日が5日の従業員が

休業3週間・休業期間中の所定労働日14日・所定労働時間112時間の場合

 

就業日数上限7日、就業時間上限56時間、休業開始・終了予定日の就業8時間未満

となります。

休業の初日と終了日に就業する場合は、8時間未満とします。

また所定労働時間内での就業なので、20時から22時まで働くといったことはできません。

 


 

★施行までにやるべきこと

 

 

それでは、「出生時育児休業」でやるべきことを整理しておきましょう。

 

◎ 申出期限を2週間前とするか1ヶ月前とするか決める

 

◎ 申出期限を1ヶ月前とする場合は、

   □ 雇用環境整備を2つ以上選択する

   □ 数値目標を決める

   □ 意向確認のリマインド方法を決める

   □ 上記内容を労使協定で締結する

 

◎ 産後パパ育休中の就業を認めるか決める

 

◎ 就業を認める場合は、労使協定を締結する

 

 


 

法改正全体

 

最後にやるべきことをまとめましょう。

 

①上記で挙げた「施行までにやるべきこと」を確認し、自社でどれを選択するか決めましょう。

 

②その選択した内容に合わせた内容で育児介護休業規程を変更します。

 

③そのほかの改正内容(有期雇用従業員の要件緩和や育児休業の分割取得など)に合わせて育児介護休業規程を変更します。

 

④選択した内容に必要な書式を作成します。

 

 

育児介護休業法の改正内容はわかりにくいところが多いので、

細かい内容は省略し「施行までにやるべきこと」をピックアップしてお伝えさせていただきました。

 

 

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