ドライバー職 2024年4月より時間外労働の上限規制が適用

2023/02/21 コラム

2019年4月、労働基準法の改正により時間外労働の上限規制が導入されました。

 

この改正により法律上、時間外労働の上限は原則として⽉45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることができなくなりました。

 

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも、以下を守らなければなりません。

 

・時間外労働が年720時間以内

・時間外労働と休⽇労働の合計が⽉100時間未満

・時間外労働と休⽇労働の合計について、「2か⽉平均」「3か⽉平均」「4か⽉平均」「5か⽉平均」「6か⽉平均」が全て1⽉当たり80時間以内

・時間外労働が⽉45時間を超えることができるのは年6か⽉が限度

 

詳しくはこちらの記事もご確認ください。

 

 

時間外労働上限規制の改正は中小企業では1年間猶予され、2020年4月1日から適用。

 

そして、建設事業、自動車運転の業務、医師については、5年間猶予されることとなりました。

 

最近、よく耳にする「2024年問題」とは、この5年間猶予されていた建設事業、自動車運転業務の上限規制のことで、とりわけ長時間労働になりがちな運送業のドライバーの労働時間をどうするかが問題となっているようです。

 

そこで、

今回は自動車運転業務(ドライバー職)の労働時間について確認してみたいと思います。

 


 

 

時間外労働「年960時間」の上限規制が始まります!

 

 

ドライバーについて、時間外労働の年960時間の上限規制が適用されます。

 

ドライバーの労働時間については、改善基準告示というものにより基準が定められています。この改善基準告示は法律ではないため、違反をしても罰則はありません。

(労働基準監督署の是正勧告、国交省の行政処分等を受ける可能性はあります。)

 

今回の時間外労働「年960時間」の上限規制は労働基準法により定められたものとなりますので、違反した場合は罰則の対象となります。

 

そしてこの時間外労働「年960時間」の上限規制に合わせてこれまでの改善基準告示も見直されます。

 

この改善基準とは、

「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(大臣告示)のことを言います。

自動車運転者について、労働時間等の労働条件の向上を図るため拘束時間、休息時間等の基準を定めているものとなります。

 

つまりドライバーについては、労働時間だけでなく、拘束時間、休息期間、運転時間も注意しながら、時間管理を行っていく必要があります。

 

それでは、改正後の改善基準告示の内容も確認しておきましょう。

 

 

 

現行

改正後(2024年4月1日~)

1年、

1か月の

拘束時間

1か月293時間以内

【例外】労使協定により次のとおり延長可能

1年3,516時間以内の範囲で

1か月320時間以内(年6回まで)

1年3,300時間以内

1か月284時間以内

【例外】労使協定により次のとおり延長可能(①②を満たす必要あり)

1年3,400時間以内

1か月310時間以内(年6回まで)

 ①284時間超えは連続3か月まで

 ②1か月の時間外・休日労働の時間数100時間未満

1日の

拘束時間

原則13時間以内

(上限16時間、

15時間超えは週2回まで)

原則13時間以内

(上限15時間、14時間超えは週2回までが目安)

【例外】宿泊を伴う長距離貨物運送の場合、継続16時間まで延長可(週2回まで)

1日の

休息時間

継続8時間以上

継続11時間以上を与えるよう努めることを基本とし、

9時間を下回らない

【例外】宿泊を伴う長距離貨物運送の場合、継続8時間以上(週2回まで)

 

 

現行

改正後(2024年4月1日~)

運転時間

2日平均1日あたり9時間以内

2週平均1週あたり44時間以内

現行どおり

連続

運転時間

4時間以内

(運転の中断は、

1回10分以上、合計30分以上)

4時間以内

運転の中断時には、原則として休憩を与える

(1回概ね10分以上、合計30分以上)

【例外】SA、PA等に駐停車できず、やむを得ず4時間を超える場合、4時間30分まで延長可

予期しえない事象

継続8時間以上

予期しえない事象への対応時間を、1日の拘束時間、運転時間(2日平均)、連続運転時間から除くことができる

勤務終了後、通常通りの休息期間を与える。

予期しえない事業とは、故障、災害、事故による道路封鎖や渋滞、異常気象に遭遇し、正常な運行が困難など

 

 

現行

改正後(2024年4月1日~)

分割休息

特例

継続8時間以上の休息期間を与えることが困難な場合

・分割休息は1回4時間以上

・休息期間の合計は10時間以上

 

・一定期間(2か月程度)における勤務回数の1/2が限度

継続時間以上の休息期間を与えることが困難な場合

・分割休息は1回3時間以上

・休息期間の合計は

2分割:10時間以上 3分割:12時間以上

3分割が連続しないよう努める

・一定期間(1か月程度)における勤務回数の1/2が限度

2人常務

特例

車両内に身体を伸ばして休息することができる設備がある場合

拘束時間を20時間まで延長し休息期間は時間まで短縮可

現行の内容に次の例外を追加

 

【例外】設備(車両内ベッド)が※の要件を満たす場合、次のとおり、拘束時間をさらに延長可

・拘束時間を24時間まで延長可

(ただし、運行終了後、継続11時間以上の休息期間を与えることが必要)

・さらに8時間以上の仮眠時間を与える場合、

拘束時間を28時間まで延長可

 

※車両内ベッド長さ198㎝以上かつ幅80㎝以上の連続した平面であり、かつクッション材等により走行中の路面等からの衝撃が緩和されるもの

 

隔日勤務

特例

2暦日における拘束時間は21時間

休息期間は継続20時間以上

 

【例外】仮眠施設で夜間4時間以上の仮眠を与える場合、拘束24時間まで延長可(2週間に3回まで)

現行通り

 

フェリー

特例

・フェリー乗船時間は、原則として、休息期間(減算後の休息期間は、フェリー下船時刻から勤務終了時刻までの間の時間の2分の1を下回ってはならない)

・フェリー乗船時間が時間を超える場合、原則としてフェリー下船時刻から次の勤務が開始される

現行通り

 

 

「拘束時間」とは、労働時間と休憩時間(仮眠時間などもを含みます。)の合計時間です。

つまり、始業時刻から終業時刻までの拘束されるすべての時間となります。

拘束時間には、運転時間、整備を行う時間のほか、手待ち時間(荷待ち時間など)も含まれます。

 

「休息期間」とは使用者(会社)の拘束を受けない期間です。

勤務終了後(終業時刻)と次の勤務(始業時刻)の間の時間であって、休憩時間や仮眠時間等とは異なります。

休息期間は、疲労の回復、睡眠時間を含む労働者の生活時間として、従業員の全く自由な判断に委ねられる時間です。

 

 


 

 

準備・対応を進めましょう

 

2023年4月からは中小企業においても

「月60時間を超える残業に対し、5割増し賃金の支払い」が始まります。

 

この対応も含めて準備を進めていきましょう。

 

☑就業規則や賃金規程の割増率の条文に5割の計算式を追加
法改正に合わせて就業規則や賃金規程の変更が必要です。
2023 年4 月1 日までに変更をして、労働基準監督署へ届出ましょう。

 


☑ 給与計算システムの確認
残業60 時間超えの5 割増しの残業代計算に対応するため、給与計算システムの設定を確認しておきましょう。

 


☑ 社内に60 時間超え残業に該当する従業員がいるか確認しましょう
直近1 年くらいで残業60 時間を超えている従業員をリストアップしておきましょう。
ドライバーだけでなく、事務職や作業職も対象となります。

 


☑ 該当する従業員がいる場合は原因を洗い出しましょう
リストアップした従業員を個別に確認していき、⾧時間労働となっている原因を洗い出していきましょう。
社内体制の原因だけでなく、荷主との関係(条件)で⾧時間労働になっているケースも少なくありません。

 

(社内)
労働時間の適切な把握を行い、それぞれの業務量が適正か社内の体制に原因がないかチェックしてください。
(荷主)
荷主先における⾧時間の待機時間や荷役時間、無理な運行の依頼など、荷主に起因する原因がないかチェックしてください。

 

 

☑ 時間外労働の削減に向け、具体的に取り組みましょう
原因を把握できたら、時間外労働削減に向けて取り掛かりやすい課題から見直していきましょう。

(社内)
業務量に偏りがあれば、管理体制、仕事の進め方、業務フローなどを見直し、平準化を図るなど業務の効率化を進めましょう。
(荷主)
荷主に対し、具体的な問題点を挙げ、見直しに向け、話し合いの場をもち、
改善が図られない場合は、残業手当の上昇分を荷主に負担してもらうことを検討しましょう。

 


 

法改正施行の2024年4月まであと1年ほどです。

まずは、各改正内容をきちんと把握した上で、

ドライバーの労働時間管理が適正であるか見直しを図り、早い段階から準備に取り掛かりましょう。

 

また2023年4月から開始される残業60時間超え5割増しについて

就業規則や賃金規程の変更、

また正しく残業代が計算できるよう、

労働時間カウントの方法や給与計算システムの設定など

あらかじめ確認しておきましょう。